父の日イメージ

父の日が来ると思い出すこと

私の父は幼い頃から私の誕生日に何か買ってくれたり、おめでとうと言葉をかけてくれるような人ではありませんでした。
それが理由ではないですし、何かこれといった事があった訳ではないのですが、いつの間にか仲が良いとは言い難い親子関係になっていました。
お互いに無視してはいないけれど、必要最低限の会話しかせずに月日は過ぎていったのです。
そして私は進学のために実家を離れ、そのまま社会人になりました。
もともと身体が丈夫でなかった父はその頃になると持病が悪化し、時には入院すようなこともありました。
母への負担も増えてきた為、転職を機に実家に戻ることを決意したのです。
久しぶりの同居生活は散々なものでした。
一人暮らしに慣れてしまった私には両親の生活リズムが合わず窮屈に感じられたのです。
またその一方ではいつのまにか両親が年を取ってしまったことに驚かされていました。
両親が年老いてゆくという現実に気づいたのです。
そんなある日、父と二人で家にいた時のことです。
ふと何の前触れもなく父がつぶやきました。
「悪かったな、恨んでいるんだろうな。」と。
父はずっと私との関係性を悔やんでいたのです。
突然の言葉に何を返せば良いかわかりませんでした。
ただ、冗談のように「何言ってるの。そんなわけないでしょ。」と妙に明るい声で返すのが精いっぱいでした。
その時わかったのです。
父もどうしたら良いかわからなかったのだということ。
ただ子育ての途中でつまずいてしまっただけなのだということです。
それ以来、父との関係は変わりました。
今までのように言葉が少ないことに変わりはありませんでしたが、暖かい絆のようなものを感じるようになったのです。
それからは父の日に毎年ハンチングをプレゼントしました。
あげる度に父が見せる嬉しそうな顔が思い浮かびます。
親戚や知人から「その帽子いいね」と褒められると、その度に「娘が買ってくれた」と自慢げに話していました。
もともとハンチングが好きな人でしたが、本当に毎日にように被ってくれていました。
父が亡くなってもう何年も経ちますが、昔の関係が嘘だったように、今も父の存在を感じます。
そして父の日がやってくると思わずハンチングを買いたくなってしまうのです。

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